花々と星々と~お嬢さん放浪記
2008年 12月 02日
最近埃を払って読み直していた本3冊。
花々と星々と(中央公論社)
ある歴史の娘(中央公論社)
お嬢さん放浪記(中央公論社)
すべて犬養道子さんが書かれたもの。
犬養道子さんって、5・15事件で暗殺された
総理大臣、犬養毅さんのお孫さんです。
元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんは、
道子さんの従姉のお嬢さん。
恵まれた環境の中で、当時の最も
リベラルな芸術家たちに囲まれて
育ちながら、時代の流れの中で、
いやおうなしに、5・15事件やゾルゲ事件などなどに
巻き込まれていく道子さんが、長い自伝の最後の1章を、
聖書との出会い、神との出会いに
さいていらっしゃるのが、興味深かったです。
「お嬢さん放浪記」は、神様を見出したあとの彼女が
日本を飛び出して、世界にでていくお話。
人との出会いの記録がすばらしい。
道子さんは、洗礼を受けたのち、四谷(信濃町)にあった
自宅を、カトリックの修道会に寄付します。
クララは、27歳から28歳にかけて、ある方のご紹介で
この修道会を知り、時間を見つけては、この修道会の
広い和室の御聖堂で、静かなひとときを過ごしました。
20畳ほどもある広い和室の御聖堂。窓辺にはシスターたちが丹精こめて
育てている大きなシクラメンの鉢が並び、時折、電車が通り過ぎる音が
聞こえてくる場所。カタンカタンカタン・・・という電車の音がなつかしいです。
シスターたちは、優しく見守りながらも、介入をひかえてくださり、
(その距離感がどんなにありがたかったか・・・)
気がすむまで時間を過ごして帰ろうとすると、スリッパの中に、
「どこどこのお部屋におやつを用意してあります。召し上がれ」と
書かれた小さなお手紙がはいっていたりして、
帰りにひとりで、おやつを食べて帰ったりしていました。^^
いろんな意味で転機にあったわたしのために、
静かな場所を提供してくださったシスターたちの住まい。
その住まいが、犬養道子さんが捧げたものだったのです。
ずいぶん前に、その建物は取り壊されて、新しい建物が建ったと
聞きましたが、わたしは新しい建物には一度も足を運んだことは
ありません。
ちなみに、2・16事件で、時の教育総監であった父親、渡辺錠太朗さん
が1mの距離で暗殺されたのを目撃した渡辺和子さん
(ノートルダム清心女子大学学長、シスター)もまた、長じて
カトリックの洗礼を受けられた方です。
生涯独身で、飢餓や難民の方がたのために働かれた犬養道子さんと
シスターとして、その生涯を教育のために捧げておられる渡辺和子さん。
このおふたりの発言とその生き方、ときどき思い出しては
心にとめています。(カトリックとプロテスタントについては、よく質問
を受けるので、いつかまた別の記事にしたいと思っています。)
犬養道子さんは、「ある歴史の娘」の最後でこう書いておられます。
~そして、私はふと考えた、いま煙となって行く「私の過去」を形成した
すべてのものごとー私を苦しめさいなんだ出来事や人々をもすべて含めてー
は、結局、私をいま立つ新生の門口にまで導くいわば道具であったのだ、と。
5・15も、ゾルゲ事件も巣鴨の拘置所も、踏み込んで来た検事たちも、
お祖父ちゃまの死も、家の中の相克も、上海も、和平工作の人々も、
幼い頃の白樺の人々も、父も母も弟も、「冷たい」世間も、一切は、それらに
よって私が問いを発し、求め、探し、たずねて、己が生の意味を「在る者・神」
の中に見出すべく、与えられた尊い旅路の「道しるべ」であった。
わが歴史を通してー大正・昭和の歴史の波間に置かれたわが「小さき歴史」
を通して、語り続けたのはー神であった。~
by clara19
| 2008-12-02 17:52
| 本